FAって何?取得条件やメリット・デメリット、FA事例について解説!

野球基礎知識

こんにちは。
プロ野球選手が球団を移籍する際によく耳にする「FA」という言葉。
他にも「ポスティング」という方法もあり、プロ野球の移籍する仕組みは複雑ですよね。

野球ファンA
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どうすればFA権が取得できるの?
FA権を使わなければ、翌年使えるの?

野球ファンB
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FAランクって何?

今回の記事ではFAに関する疑問を解消するために徹底解説していきます!

FA(フリーエージェント)とは?

FAとはフリーエージェントの略称で、野球選手が様々な球団と契約を結ぶことが出来る権利です。
日本野球機構(以降NPBと呼びます)では、「国内FA」と「海外FA」の2種類があります。
規約によると権利内容と取得条件は以下の通りです。

FA権利内容

「国内FA」とは,この組織が定める国内FA資格条件を満たし,この組織のいずれの球団とも選手契約を締結する権利を有する選手をいい,「海外FA」とは,この組織が定めるFA資格条件を満たし,外国のいかなるプロフェッショナル野球組織の球団をも含め,国内外のいずれの球団とも選手契約を締結する権利を有する選手をいう

日本プロ野球選手会 フリーエージェント規約 2009年度版 第1条

FA取得条件

1. 国内FA取得条件

選手は,入団して初めて出場選手登録された後,その日数がセントラル野球連盟及びパシフィック野球連盟の同じ年度連盟選手権試合期間中(以下「シーズン」という。)に145日を満たし,これが8シーズンに達したときに,国内FAとなる資格(以下「国内FA資格」という。)を取得する。ただし,2007年以降に行われた新人選手選択会議により選択されて入団した選手のうち,選択された当時,大学野球連盟又は日本野球連盟に所属していた選手については,上記の8シーズンを7シーズンと読み替えるものとする。

日本プロ野球選手会 フリーエージェント規約 2009年度版 第2条 1

つまり、およそ8年間一軍選手されていれば国内FA権が取得できるようですね。

2. 国外FA取得条件

選手は,入団して初めて出場選手登録された後,その日数がセントラル野球連盟及びパシフィック野球連盟の同じシーズン中に145日を満たし,これが9シーズンに達したときに(ただし,それ以前に国内FAの権利を行使していた場合を除く。),海外FAとなる資格(以下「海外FA資格」という。国内FA資格及び海外FA資格の双方を「FA資格」と総称する。) を取得する。

日本プロ野球選手会 フリーエージェント規約 2009年度版 第2条 2

国外FAは9年間の一軍選手登録が必要と、国内FAより時間がかかるようです。
なお、一軍登録期間145日で1年として換算されます。期間ですので、試合数ではないことにご注意ください。

FA権の行使とは何か?行使によるメリット・デメリットは?

では、FA権はどのように使うのでしょうか。こちらもフリーエージェント規約に記載がありました。

FAの権利を行使するためには,本規約第6条1号に定める期間内にFAの権利を行使することを表明し,手続きをとらなければならない。所定の期間内に手続きをとらない場合は,FAの権利の行使を保留したものとする。コミッショナーは,FAの権利を行使する旨文書で申請のあった選手(以下「FA宣言選手」という。)名をその年の日本選手権シリーズ試合が終了した日の翌日から土,日,祭日を除く7日間を経た翌日の午後3時にFA宣言選手として公示する。

日本プロ野球選手会 フリーエージェント規約 2009年度版 第4条

日本シリーズ終了日の翌日から申請が可能で、申請から8日後に公示されるようです。
公示された翌日から他球団との契約交渉が可能となります。

では、FA権を行使することによるメリット・デメリットは何なのでしょうか?
一般的に考えられるものをまとめました。

メリット
  • 憧れの球団に移籍する可能性が生まれる。
  • 他球団との交渉によって複数年契約が見込める。
デメリット
  • 過度なマネーゲームを防止するため、翌年の年俸は現状維持が上限となる。(複数年契約でアップすること可能性あり)
  • どの球団も交渉に名乗り出なかった場合、自由契約となってしまう可能性がある。
  • 再度FA権を取得するには、最低でも8シーズン過ごす必要がある。

行使してしまうと年俸が上がることはないようですが、複数年契約を勝ち取ることが出来れば安定したプロ野球生活を起こることが出来るのは大きいですね。
またFA権を行使しない場合にも、FA権は翌年には再取得可能です。
すぐにFA権を取得せず、所属球団と1年契約をした翌年にFA移籍といった事例もあります。

  • 黒田 博樹 (広島東洋カープ⇒ロサンゼルス・ドジャーズ⇒ニューヨーク・ヤンキース⇒広島東洋カープ)
    2006年オフにFA権を得るが行使せず、カープと4年契約(契約期間中でもメジャー移籍を容認する契約)を結ぶ。
    翌2007年オフにFA権を行使し、3年約40億円でドジャーズ契約。
  • 野上 亮磨 (埼玉西武ライオンズ⇒読売ジャイアンツ)
    2016年オフにFA権を得るが行使せず、推定5,000万円でライオンズと単年契約。
    翌2017年オフにFA権を行使し、3年契約で総額4.5億円で巨人と契約。

FAランクとは?人的補償制度についても解説

FAランクという言葉を耳にしたことはあるのではないでしょうか。

野球ファンC
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ランクCだから人的補償なしでFA獲得できる! お買い得!

同時に人的補償という言葉も聞き覚えがあるかもしれません。
そこでFAランクとは何か?人的補償とは何か?について解説していきます。

FA制度は選手によっては選択肢が増えるためメリットが大きい一方で、元所属球団(旧球団と呼びます)にとっては大きな損失となってしまいます。
そこで、旧球団への補償として、選手または金銭による補償制度が設けられています。
ただ、どんな選手に対しても同様の補償となってしまうと、不公平が生じてしまいます。(控えレベルの選手を放出して、一線級の選手が補償として獲得されてしまう、など)
そのため、FA選手には年俸に応じてランク付けがされており、ランクに応じて補償が異なります。

FAランク

FA補償は,FA宣言選手の当該年度の参稼報酬の額に基づく旧球団における以下のランク付け(外国人選手を除く。なお,野球協約82条(4)号に規定する者は,本規約においては,「外国人選手」と見做す。)に従い行う。なお,ある選手の参稼報酬の額が他の選手の参稼報酬の額と同じである場合には,出場登録日数の総数が多い選手のほうを順位が下とし,出場登録日数の総数も同じである場合には,年齢が上の選手を順位が下とする。

(1) Aランク 上位1位~3位
(2) Bランク 上位4位~10位
(3) Cランク 上位11位以下

日本プロ野球選手会 フリーエージェント規約 2009年度版 第10条 2

なお、Cランクの選手に対しては旧球団は獲得球団に人的補償を求めることが出来ません
Cランクの選手が「お買い得」と表現される理由はここにあるのですね。

では、AランクBランクの選手を獲得した際の補償内容を見ていきましょう。
まずは「選手による補償」からです。

選手による補償

旧球団が,選手による補償を求める場合は,獲得球団が保有する支配下選手のうち,外国人選手及び獲得球団が任意に定めた28名を除いた選手名簿から旧球団が当該FA宣言選手1名につき各1名を選び,獲得することができる。前記の選手名簿の旧球団への提示はFA宣言選手との選手契約締結がコミッショナーから公示された日から2週間以内に行う。選手による補償が重複した場合は,当該FA宣言選手と選手契約した球団と同一連盟の球団が他の連盟の球団に優先する。また同一連盟内においては,当該年度連盟選手権試合の勝率の逆順をもって,球団の優先順位とする。

日本プロ野球選手会 フリーエージェント規約 2009年度版 第10条 3(1)

いわゆる「人的補償」のことですね。
ただ、誰でも取ってよい!となればFA獲得球団も声を上げられませんよね・・・。
そのため、旧球団は獲得球団の所属選手のうち、28名の枠(プロテクト枠と呼ばれるもの)を除いた選手から選ぶ必要があります。
それでも人気選手が枠から漏れてしまうこともあります。
以下3名の選手は有名な事例です。

  • 工藤 公康 (埼玉西武ライオンズ⇒福岡ダイエーホークス(現福岡ソフトバンクホークス)⇒読売ジャイアンツ⇒横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)⇒埼玉西武ライオンズ)
    2度目のFA宣言によって移籍した巨人では、移籍初年度である2000年から12勝と目覚ましい活躍を見せていました。
    2006年にはケガもあり3勝止まりとなっていましたが、選手からの信頼は厚く当時若手選手であった山口鉄也選手などを連れて自主トレを行うほどでした。
    しかしその自主トレの最中に門倉健選手のFA移籍が決まり、その人的補償として横浜ベイスターズへ放出されることとなりました。
  • 内海 哲也 (読売ジャイアンツ⇒埼玉西武ライオンズ)
    2003年ドラフト会議にて巨人が自由獲得枠で交渉権を獲得し入団。
    入団2年目から頭角を現し、2011年2012年にはセ・リーグ最多勝に輝いた超一流選手でした。
    36歳となる2018年シーズンは全盛期ほどではないものの完封勝利を挙げるなどの活躍を見せ、最終的には5勝5敗の結果に終わりました。
    しかし2018年オフ、FA宣言をした埼玉西武ライオンズの炭谷銀仁朗選手を巨人が獲得し、人的補償として放出されました。
  • 長野 久義 (読売ジャイアンツ⇒広島東洋カープ)
    プロ入り前から巨人入りを熱望しており、2006年日ハム・2008年ロッテと2度のドラフト指名を受けるも入団を拒否。
    2009年に巨人からドラフト1位指名を受け、念願の巨人入りを果たした。
    入団一年目から期待通りの活躍を受け、打率.288・19本塁打と好成績を収めて新人王を獲得。
    その後も首位打者(2011年)、最多安打(2012年)、ゴールデングラブ賞(2011-2013年)、ベストナイン(2011-2013年)など様々なタイトルを獲得し、巨人の中心選手となった。
    2018年は打撃不振やケガに悩まされたことで、プロ入り後初めて規定打席に到達することが出来なかったものの、9年連続100安打を達成した。
    チームメイトから「チョーさん」の愛称で親しまれ非常に信頼が厚かったが、2018年オフにFA宣言をした広島東洋カープの丸佳浩選手を巨人が獲得し、人的補償として放出されました。
管理人
管理人

工藤元監督は43歳という年齢もあったのである程度理解できましたが、
内海選手・長野選手の放出は驚きましたね。

続いて、金銭補償についてみていきましょう。

金銭による補償

金銭補償はFA対象選手が「初めてのFAかどうか」と「人的補償も求めるか」で金額が異なります。

1. 初めてのFAかつ、人的補償もない場合

旧球団が,選手による補償を求めない場合,旧球団は,獲得球団に対し,その前参稼報酬年額に対する以下の割合の金額につき,金銭補償を求めることができる。

① 当該選手がAランクに属する場合 80%
② 当該選手がBランクに属する場合 60%

日本プロ野球選手会 フリーエージェント規約 2009年度版 第10条 3(1)

2. 初めてのFAかつ、人的補償ありの場合

旧球団は,獲得球団に対し,前号の選手による補償のほか,その前参稼報酬年額に対する以下の割合の金額につき,金銭補償を求めることができる。

① 当該選手がAランクに属する場合 50%
② 当該選手がBランクに属する場合 40%

日本プロ野球選手会 フリーエージェント規約 2009年度版 第10条 3(1)

3. 2度目以降のFAかつ、人的補償がない場合

旧球団が,選手による補償を求めない場合,旧球団は,獲得球団に対し,その前参稼報酬年額に対する以下の割合の金額につき,金銭補償を求めることができる。

① 当該選手がAランクに属する場合 40%
② 当該選手がBランクに属する場合 30%

日本プロ野球選手会 フリーエージェント規約 2009年度版 第10条 4(2)

4. 2度目以降のFAかつ、人的補償ありの場合

旧球団は,獲得球団に対し,前号の選手による補償のほか,その前参稼報酬年額に対する以下の割合の金額につき,金銭補償を求めることができる。

① 当該選手がAランクに属する場合 25%
② 当該選手がBランクに属する場合 20%

日本プロ野球選手会 フリーエージェント規約 2009年度版 第10条 4(1)

少し複雑ですが、2016年オフにオリックスバファローズから阪神タイガースにFA移籍した糸井嘉男選手を例に見てみましょう。
糸井選手は2016年の年俸は推定2億8000万円となっており、FAランクはBでした。
糸井選手は日本ハム→オリックス→阪神と2度目の移籍ではありますが、オリックスへはトレード移籍でしたのでFA移籍は初めてとなります。
またオリックスは阪神から人的補償として金田和之選手を獲得。
上記の状況から、金銭補償は「初めてのFAかつ、人的補償ありの場合 」のケースに該当することなります。
結果として

  • 人的補償 ・・・あり(金田和之選手)
  • 金銭補償 ・・・1億1200万円

をオリックスは獲得したと思われます。

まとめ

ここまでFA制度について解説してきました。
補償制度が複雑でしたのでまとめますと、以下の通りとなります。

FA選手のランク補償内容
(初FAの場合)
補償内容
(2度目以降のFA)
ランクA (球団年俸上位1位~3位)旧年俸80% 又は
人的補償+旧年俸50%
旧年俸40% 又は
人的補償+旧年俸25%
ランクB (球団年俸上位4位~10位) 旧年俸60% 又は
人的補償+旧年俸40%
旧年俸30% 又は
人的補償+旧年俸20%
ランクC (球団年俸上位11位以下) 補償なし補償なし

FA移籍はファンにとっては淋しい一面はありますが、選手の活躍の場を広げたり夢をかなえるための制度でもあるため、複雑な気持ちになりますね・・・。
いずれにしてもFA権は選手の権利ですので、後悔のない決断をしてもらいたいですね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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